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【高校生記者×みやざきミライ農業】農家と企業のアイデアで生まれたピーマン自動収穫ロボットが、農業の課題を解決する

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■宮崎の農業が抱える、避けては通れない「高齢化」という課題

 宮崎の経済を支える農業は、今さまざまな課題を抱えています。その一つが、農業従事者の高齢化です。宮崎県庁のホームページによると、本県は平成13年に全国平均よりも早く超高齢化社会を迎え、その傾向は依然として続いています。数ある産業の中でも、農業は少子高齢化の影響を受けやすく、新規就農者の減少と後継者不足も問題視されています。加えて、ますます流通や貿易の国際化が進み、競争も激しくなったことで、時代の変化に伴って農業のやり方を模索・転換していく必要が出てきました。

 今回妻高校のメンバーは、農業が直面する課題を解決すべく県内で導入されている最先端技術を取材。お話を伺ったのは新富町のピーマン農家・福山望さんと、そこで活躍しているピーマン自動収穫ロボットを開発するAGRIST(アグリスト)株式会社です。福山さんも「昔と違い、今はやり方次第で将来農業で生活していけるかどうかが決まる」と話します。

ピーマン収穫ロボット「L」

 

■1分で1~1.5個の収穫が可能に ピーマン自動収穫ロボット「L」とは

 AGRISTは、「100年先も続く持続可能な農業を実現する」をビジョンに掲げ、テクノロジーで農業課題を解決することを使命としている会社です。設立のきっかけは、新富町の地元農家から自動収穫ロボットの必要性の声が届いたこと。代表取締役の秦裕貴さんは「今後、農業がどうなっていくか考えていったときに、まずは、ロボットで労働力を代替するではなく、ロボットと人が協働して収穫遅れなどの人手不足をカバーする考え方が重要だ」と語ります。

AGRIST(株)代表取締役の秦さん

 そんなAGRISTが、農家とともに開発したのがピーマン自動収穫ロボット「L」。このロボットは、現段階、理想環境下で1分間に1個~1.5個収穫できます。ロボットの重量は約19キロ。ハウス内にはワイヤーが張り巡らされており、ワイヤーにロボットを吊り下げて稼働させます。吊り下げ式にすることで、ぬかるんだ土壌や剪定(せんてい)後の枝葉等の障害物があるハウスでも問題なく稼働させることができるのです。バッテリー式のこのロボットは、充電1時間で連続8時間の稼働が可能で、収穫したピーマンの自動排出機能も備えています。排出場所にコンテナを配置することで、自動でロボットから収穫したピーマンが排出されるという仕組みです。

「L」によって収穫されたピーマン

■ロボットの製作図も描く 農業の課題を解決する、先進的な農家の姿勢

 福山さんは、ピーマン農家でありながら、AGRISTと協力してロボットを開発する開発アドバイザー農家でもあります。福山さんがロボットを開発しようと思ったのは5年前。農業従事者の高齢化を危惧し、労働力不足を解決する術を模索していました。当時、AIなどの先進技術が普及し始めたことから、農業でもこうした技術を活用したロボットを開発できないかと考えたそうです。

福山さんは農家視点で意見を提案するだけでなく、自身でロボットの製作図を描いたりアイデアを考えたりしています。まさに「自分で考え行動する」を体現している農家なのです。

今後の農業について語る福山さん(奥左)と秦さん(奥右)

 今後、農業従事者の高齢化や減少に伴い、今の生産力を維持するのは一筋縄ではいかないでしょう。しかし、今回取材を通して、ピーマン自動収穫ロボット「L」のように、テクノロジーを活用したロボットの導入で宮崎の農業の未来を変えていくことができると確信しました。また国内で14位という広大な土地を有する宮崎県だからこそ、ロボットを導入するメリットも大きいでしょう。これからの宮崎の農業は、人の力とIoTセンサー技術やAIとの連携が重要な鍵となりそうです。

【取材・執筆】満留遥香・大田成駿・塩月彩花・秋山ななみ・海老原夕唯

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