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【高校生記者×みやざきミライ農業】アフリカ原産の作物「ソルガム」が、次世代の“飼料”になる

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■日照時間や気候が宮崎に最適な「ソルガム」 その正体とは…

 「ソルガム」という作物をご存知でしょうか? ソルガムは、アフリカ原産のイネ科の植物で世界5大穀物の一つといわれています。乾燥に強く、稲や麦の育たない環境でも育ち、人が水をやる必要がないのが特徴で、収穫量も多いため輸入飼料に変わる作物として期待されているのです。

 今回、私たち高鍋高校のメンバーが取材したのが、このソルガムを使った資源循環事業。本ソルガムは、国内で開発されたもので、ソルガムの性質上、日照時間や暖かい気候が適していることから、宮崎はソルガムの生育にふさわしい場所といえます。また、ソルガムは品種改良によって今までよりも背が高くなるようになっており、普通のソルガムは2メートルですが、宮崎のソルガムは6メートル近くにもなるのです。

 このソルガムは、収穫後に乳酸発酵を行って腐るのを防いだ上で、牛、豚、鶏の餌として使用するほか、バイオマス燃料としても活用し、地産地消につなげていきます。

ソルガム収穫の様子

■ほんのり甘い? ソルガムを試食してみた

 川南町にある飼料作物の生産販売を行う「アグリパートナーズ」にお伺いしたところ、ソルガムの茎を味見させてもらうことができました。ソルガムの茎の中には白い部分があり、ほのかに甘さがあるとのことで、実際にかじると、かすかに甘みを感じました。この甘みは牛も感じることができ、食いついてくれます。

ソルガムの茎

 今回試食したソルガムは食用としては売られていませんが、搾汁液が甘い品種もあるほか、ソルガムの実から作った粉を使って、パンを作ったりお菓子を作ったりできるそうです。ソルガムの実はGABA、食物繊維、ポリフェノールを多く含むという結果が報告されています。GABAはリラックス効果、安眠効果、中性脂肪やコレステロールを抑えるなど様々な効果が期待できるとされています。食物繊維は腸内環境を多角的に整えるとされ、美容にもうれしい成分です。ソルガムは飼料用や食用などの幅広い使用方法があり、これからも注目できる作物といえます。

収穫後に細断したソルガム

■新たな餌が粗飼料自給率を上げる

 では、このような特徴のあるソルガムを、どのように飼料として使うことができるのでしょうか。実は、県立農業大学校では、牛にソルガムを与える給餌試験を行っています。

 近年の餌の価格高騰を受け、これをソルガムで代用できないかと、試験がスタートしたそうです。試験は、和牛の繁殖雌牛を対象に行われています。ソルガムだけでは牛に必要な栄養分が足りないため、タンパク質や炭水化物を追加で与えています。

 牛から取れる牛乳や肉の品質は、牛が食べたものによって変わってくるものです。乳牛の場合、トウモロコシの飼料は糖分もカロリーも高いため、良質な乳になるとされています。しかし、餌をソルガムに変えると乳質が落ちてしまうことがあるため、牛が摂取する栄養を調整する必要があるのです。 同様に、肉はビタミンが多いと脂肪などに黄色く色が付着してしまいます。よって、ビタミンを多く含んでいる草などは肉牛にはあまり与えないようにしているのです。

このような課題はありますが、ソルガムを飼料として使うことができれば、現在海外に頼っている飼料の代わりとなり、粗飼料自給率を向上させることができます。

 まだまだ身近ではありませんが、これからソルガムが宮崎の、そして日本の持続可能な農業への一助となりそうです。

乳酸発酵されたソルガムサイレージ

【取材・執筆】今井悠翔・湯浅康平・野津手李美

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