「佐土原人形ますや」(宮崎市佐土原町上田島、TEL 0985-74-4349)が今月、約180年続く店の歴史の中で初の事業継承を行った。6代目・阪本兼次さんからバトンを引き継いだ7代目・下西美和さんは、阪本家以外から初めて事業を継承したことになる。
下西さんが最も気に入っている形の「歌舞伎組人形」。既に型が失われているものも
佐土原人形は宮崎県指定伝統的工芸品の一つで、伝統工芸士とともに場所も指定されているのは「佐土原人形ますや」だけ。佐土原人形の特徴は、歌舞伎などの一場面を再現するのに手と首の位置を変えられる「差し手・差し首」と、どこに置いても向かい合う視線の合う「組人形」の工法を採用していること。
下西さんは20歳ごろから全国のパワースポット巡りを楽しむようになり、現在も御朱印やお守り袋を集めることが趣味という。パワースポットを巡っているうちに信仰玩具に興味を持ち、郷土玩具に目覚めた。2008年ごろから飛び込みで各地の郷土玩具製作所を訪ね、佐土原人形ますやで修業し、現在に至る。下西さんは「建物の老朽化や担い手の育成など課題は尽きないが、最も頭を抱えているのが模造品の流出。体験講座をきっかけに店の人形の一部を持ち出し、まねて作ったものを『佐土原人形』としてメディアで紹介してしまう人もいる」と課題を話す。
4月3日には事業継承調印式を行った。下西さんは「数年前から型のない人形の『型おこし』や『色の復活』を進めている。古いやり方に戻すのが、実は『新しい』なのではないかと考えている。県内にも昔ながらの佐土原人形を大事にしてくださっている人もたくさんいるので、その方たちの誇りに恥じないよう、佐土原人形の魅力を現代の人にも伝えていきたい」と意気込む。
県博物館の非常勤職員だった下西さん。現在は同館「友の会」の理事を務めている。今年7月に宮崎市立図書館、11月に宮崎県総合博物館で、それぞれ佐土原人形の絵付け体験を予定している。
営業時間は10時~17時。日曜定休。