耐震工事による全面改修を行う宮崎観光ホテル(宮崎市松山1、TEL 0985-27-1212)が、作家・川端康成が滞在した522号室の保存を望む声を受け、現状をできるだけ残して保存する方針に変更することを明らかにした。
「たまゆら」文学碑除幕式記念冊子の “宮崎夕映え” のページ
3月6日に耐震工事に伴う客室の全面改装を発表した同ホテル。西館の522号室は、ノーベル文学賞受賞作家の川端康成が1964(昭和39)年11月に連続テレビ小説「たまゆら」の執筆取材のために宮崎を訪れた際に宿泊した部屋として知られる。当時は2泊の予定だったが、一説によるとホテルの部屋から望む大淀河畔の夕映えが気に入ったことから、延長して15泊したという。
広報宣伝部の長友修一部長は「客室全面改装のニュースをお伝えしてから、市民の方から問い合わせなどもあったが、保存を決めた一番のきっかけは社内の声。現在、高齢者や外国人の宿泊が増えており、ホテルは洋室が好まれる傾向にある。顧客満足度も大切だが従業員満足も大切。従業員満足度を向上することで、最終的にはお客さまへの満足度にもつながると考えている」と話す。
和室の522号室は4つのベットを備えた洋室へ改装予定だったが、保存を望む声を受け、なるべくそのままの状態をとどめた上で、デザイナーに依頼し、室内の水回りや空調、畳の入れ替え、窓枠のリフォームなどを行う予定。
改修工事は今年7月末までを予定し、その後、522号室に当時の資料を展示するなどの企画を検討しているという。長友部長は「和室を希望するお客さまや、文豪ゆかりの部屋に宿泊したいという声にも応えたい」と話し、これまで通り他の部屋と同じく宿泊可能な部屋として提供することも考えている。
8月1日から宿泊受け入れを再開する予定。