宮崎県綾町の香月(かつき)ワインズ(綾町北俣)が2月20日、完全無農薬栽培のブドウで造った純国産ワインを初出荷する。
「綾ルージュ(赤)」(右)と「綾ブラン(白)」。ラベルにはブドウ畑に生息する昆虫や雑草のイラストをちりばめた
国の「ワイン特区」に認定されている同町。ワイン用のブドウ栽培から醸造までを行う同社は、酒造量が小規模でも酒類製造免許を取得できる特区制度を活用し、昨年町内に醸造所を建設した。代表の香月克公(よしただ)さんは、ニュージーランド・マールボロ地方のワイナリーで出会った醸造家に影響を受け、現地で10年間ブドウ栽培やワイン醸造技術を学んだ。
香月さんが地元・宮崎でブドウ栽培を始めたのは8年前。同町にあった父の農園を活用し、海外から数十種類の苗を輸入した。香月さんは「こだわりは肥料や農薬を一切使わない完全無農薬栽培。リンゴの完全無農薬栽培に成功した木村秋則さんの『奇跡のリンゴ』の存在を知り、ブドウでもできるかもしれないと思った。手探りの状態から始めたため時間はかかったが、周りから不可能と言われても自分を信じてやってきた」と8年間を振り返る。
初めて醸造に臨んだ本年度は台風・長雨など天候の悪条件が重なり、ブドウの収量は当初予定の3分の1に。香月さんは「それでもおいしいワインを造りたかった。自社栽培の無農薬ブドウを100%使用し、少ない中でも工夫して最高の味に仕上がった」と自信を見せる。
今年は赤525本、白475本の限定1000本を出荷し、価格は1万800円。「この価格での販売は今回限りの苦渋の決断。前例がない中で何とかやってきたが、予想以上に本数が少なく価格を下げると経営が成り立たなくなる。唯一無二のワイン造りを今後も続けていくために、応援してほしい」と香月さん。「ブドウ栽培において宮崎は決していい環境とは言えず、苦労や困難も多かったが、ワイン造りが好きという一心でここまでやってきた。小規模でも幸せなワイン造りを続けながら、夢を持つ若者にも好きなことを極める大切さや難しさを正直に伝えていきたい」とも。
インターネットで注文を受け付けるほか、指定の酒店でも販売する。