西都市銀鏡(しろみ)・上揚(かみあげ)地区の神楽文化を追ったドキュメンタリー映画「銀鏡SHIROMI」が3月18日から、「宮崎キネマ館」(宮崎市高千穂通1、TEL 0985-28-1162)で公開される。19日の上映後には監督として舞台あいさつも行う。
境内外末社である6つの社のある山から引き継がれる面を担いで降りてくる面様(写真提供=赤阪さん)
北米海岸の先住民族と過ごした時間をまとめた作品や、「星野道夫トーテムポールプロジェクト」で知られる写真家の赤阪友昭さんが手掛ける同作。同作は、アラスカの狩猟採集民族の世界を撮ってきた赤阪さんが、雑誌「SWITCH」の企画で俳優の山口智子さんやケルト研究の鶴岡真由美教授と2012(平成24)年冬の銀鏡の夜神楽を取材したことがきっかけとなり制作された。同地区の夜神楽では、山中で夜を通して舞が続き、イノシシの生首をささげるという風習があり、赤阪さんはその独特な空気感に魅せられ、その後毎年通い始めたという。その後、神楽文化を映像に残そうと、2016(平成28)年6月から銀鏡神楽の後見人らの取材を始めた。
同作の内容は、銀鏡集落の人々の1年を追ったものとなっている。赤阪さんは「日常の暮らしの所々に神楽の習いが織り込まれており、生活の軸として銀鏡神楽の精神文化が存在している。村人の一人一人が欠かせない存在として役割を担いコミュニティーを紡いでいる。そういう営みが、これからの日本の人々の生き方として重要になるのではないかという直感がある。ただ伝統を記録に残したいという作品ではない」と話す。
アラスカやモンゴルといった海外の先住民族や狩猟採集民族と共に過ごし、日本各地の山に残された原初の信仰や祭祀(さいし)儀礼を撮影する活動を行ってきた赤阪さんによると、銀鏡神楽は「山の中にありながら星を祈りの対象とする稀有な文化」だという。「銀鏡神楽の重要な演目の中に『宿神』という星の神が出てくる。これは天皇家の祭祀儀礼にある北極星とも通じており500年以上前、もしかすると1000年以上の歴史の可能性さえあると思われる。いわゆる五穀豊穣(ほうじょう)や山の恵みを祝うといった、一般的な伝統芸能とは異なるルーツを感じている」とも。
各地の伝統文化とそこでの人々の暮らしを見てきた赤阪さんだからこそ見えてきたことを伝えたいというのも、この作品にかける思いには込められている。赤阪さんは「国内の集落の中には、どこか寂しい、人々の心がばらばらになってしまっている場所もある。銀鏡地区の人々は自集落を『自分たちの場所』と感じ取れているのだと思う。山に暮らしていても、心はいつも街を向いていたら土地にはつながれない。自分たちの文化や暮らしに誇りとつながりを持てる精神文化が、銀鏡の人々の生活の軸にある。この先の日本人の生き方の道しるべとして銀鏡の人々の世界に接してほしい」と話す。
上映時間は12時~14時。チケット料金は1,800円。