日南市飫肥(おび)地区にある公益財団法人、服部植物研究所(日南市飫肥6、TEL 0987-25-0110)が2月5日、「松下正治記念賞」を受賞した。
コケ研究を国内外に広めた功績が認められ、松下幸之助記念志財団から「松下正治記念賞」を授与された(画像提供=公益財団法人 松下幸之助記念志財団 松下幸之助花の万博記念賞事務局)
同研究所は世界唯一のコケ専門研究機関として1946(昭和21)年、服部新佐博士が創立。服部博士が逝去した1992(平成4)年の後には、運営のサポートをしていた林業経営者の南寿敏郎さんが代表となり運営してきた。南寿さんは「当初は全くコケについて知らない自分にできるのかと思った」と振り返る。南寿さんが理事長に就任して以降は、研究所の常設展示をはじめ、市民を対象にした「コケの日」のイベントの開催、テラリウム作りのワークショップや地元学生の探究活動の支援など、さまざまな形でコケ植物と研究についての普及活動を行ってきた。現在も常設展示には、5人いる職員が交代制で説明、案内に対応する。
県外にいる研究者の高齢化などで研究レベルの低下が危ぶまれた時期もあった。それでも、2017(平成29)年に研究者の片桐知之さんを迎え、研究所が毎年1回発行している学術英文誌「Hattoria」のレベルアップにつながった。今年4月からは中国人留学生の若い研究者が在籍する予定。
今回同研究所が受賞したのは、30回目となる松下幸之助花の万博記念賞「松下正治記念賞」。1990(平成2)年に大阪で開催された国際花と緑の博覧会「自然と人間との共生」という理念の実現に貢献した世界唯一のコケ専門研究機関として評価された。表彰式では、理事長の南寿さんが代表して松下幸之助記念志財団から表彰状、クリスタル盾と副賞200万円を授与された。
授賞式に高知大学からオンラインで講演した片桐さんは「服部植物研究所のいいところは、研究者に裏打ちされた研究が、市民に開かれているところ。民間の研究所のよさを生かし学術的に貴重な標本資料の受け入れ、保存、服部植物研究所の報告書をはじめとする学術雑誌のデータベース化を進めホームページでの情報開示に努めている」と述べた。
南寿さんも「今回受賞した松下正治記念賞は、特に情報発信や社会貢献をしている個人や団体に贈られている賞であり、日本の商人代表ともいえる松下幸之助の冠を掲げた財団から、民間で頑張ってきたことを認められたことが大変うれしい。服部植物研究所は地元の財産。今回の受賞を励みにこれからも研究所をどんな形でも続けていきたい」と話す。