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【宮崎のアンダーグラウンドカルチャー特集!】
決意を彫る、タトゥーアーティストの20年 タトゥースタジオ「BALANCE TATOO STUDIO」

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 宮崎では、音楽シーンやタトゥーシーン、スケートボードシーンなど、多くの人の目に触れない場所で多様な文化が営まれ、脈々と受け継がれている。今回は第1弾として、タトゥーカルチャーにフィーチャーする。

 近年、若者を中心に人気が高まるタトゥー。ファッション感覚でタトゥーを入れているインフルエンサーなどをSNSで見る機会も多いのでないだろうか。2018(平成30)年に起こった「タトゥー施術に関する医師法違反事件」では「タトゥーは医療行為でなく芸術」と芸術の一部であるとの判決が言い渡された。こうしたバックグラウンドもあり、タトゥーそのものも一つのカルチャーとして認知を広めてきている。そこで今回は、宮崎市内のタトゥースタジオ「BALANCE TATOO」を取材し、宮崎におけるそのカルチャーの変遷と現在地について取材した。ひなた宮崎経済新聞でインターンをした、宮崎大学地域資源創成学部3年の串間怜央がレポート。

 

■宮崎のタトゥーシーンを取材するために訪れた「BALANCE TATOO」

 宮崎駅から徒歩12分の若草通りにある同店は、オーナーのKOWHEY(48)さんとKENGO(24)さんの2人の彫師が営むタトゥースタジオで、今年で20周年を迎える。

 KOWHEYさんは、関西出身で元々絵を描く仕事を目指し、美術系の大学に進んだ。そこでさまざまな表現方法に触れ、タトゥーインクとタトゥーマシーンの世界に惚れ込むみ、人の身体に自分のデザインを表現するようになった。

 宮崎へ移住したきっかけは、趣味のサーフィン。現在も波に乗りつつ、同店を経営する。そんなKOWHEYさんが得意とする彫り方は、1930年代頃からアメリカで人気になった「アメリカントラディショナルタトゥー」と日本を象徴する和の図柄を、伝統的な手法で表現された刺青である「和彫り」で、古き良きタッチのデザインとなっている。

 特に「アメリカントラディショナルタトゥー」は船乗りに好まれたデザインで、シンプルなカラーを大胆に使っており、人魚やツバメ、帆船などいくつかの定番モチーフが存在する。

 

■KOWHEYさんが振り返る、宮崎のタトゥーシーン20年

 日本のタトゥーシーンにおけるターニングポイントは、任侠映画だというのがKOWHEYさんの説。映画をきっかけにタトゥーを入れる人も増えたが、それと同時にカルチャー自体への偏見の目も増えたという。テレビなどのメディアでタトゥーが映ることすら良しとされない時代もあり、実際にタトゥーを楽しむ人の中には疎外感を感じる人も多かった一方、そのアンダーグラウンドな良さを感じる人もいたようだ。

「20年前は親に黙って彫りに来る人も多く、親に黙って彫師になり縁を切られる人もいました。当時から宮崎にも数件タトゥースタジオがありましたが、敷居が高い店も少なくなかったと思います。またジャンルも偏りがあり、和彫りが多かったのが当時の特徴でした」とKOWHEYさんは話す。

 

■タトゥーを彫る人、彫られる人が抱くそれぞれの哲学

 芸能人や格闘家の中にもタトゥーを自己表現の一つとして体に施す人も増え、少しずつその敷居も下がり、現在では親と一緒に彫りに来る方や、親子2人揃って一緒に入れる人もいるという。

 KOWHEYさんは「タトゥーを入れることで自らを表現したり、決断をするために(タトゥーを)入れるなど、それぞれの人が多様な思いを込めてタトゥーを入れています。タトゥーは、そういった人の生き方や自己表現に関わる一生モノの決断であり、アートでもあるんです。最近はSNSからタトゥーのデザインを持ってくる人もいますが、一生残るものだからこそ彫りたい人に丁寧に向き合って、本当に彫りたいものや本人の思いを大切にしています。私自身、自分の信念を映し出す鏡になるような、オリジナリティのあるものを提案していくべきだと考えていますし、そういった思考で入れる決断をしてほしいですね」と話す。

 

■技術の継承と新たな世界観の構築 弟子・KENGOさんとの絶妙な役割分担

 現在タトゥーのスタイル自体も幅が広がってきている。和彫りやトラディショナルなスタイルだけではなく、韓国から入ってきた独自表現も広まってきているという。同店では幅広いデザインに対応できるよう弟子を育てたり、KOWHEYさん自身も若い世代と交流することで感性を磨き切磋琢磨しているという。

 KENGOさんは、KOWHEYさんの弟子としてスタジオに在籍しており、コロナ禍に一人前のタトゥーアーティストとしてデビューした。「ニュースクール」と呼ばれるジャンルを得意としており、アメリカントラディショナルタトゥーに似ているが、よりポップでクレイジーなデザインになっている。

■彫師だからこそ見ることができる「宮崎という場所の個性」

 最後にKOWHEYさんは宮崎のタトゥーシーンについて、「宮崎の人は個性的な人が多く、よく『陸の孤島』とは言われますが、私にとって宮崎は『一つの国』のようなイメージです。実際、マイノリティでもへこたれない人がBALANCEに来てくれています。タトゥーは都会的なイメージがありますが、私も宮崎で20年間この店をやってくることができたという実績がありますし、自分が求めているようなお客さんも来てくれるようになっていて、これから宮崎はもっともっと面白い場所になると感じています」と語る。

 宮崎のタトゥーカルチャーの歴史を垣間見ることができた今回の取材。脈々と受け継がれる技術承継と時代に合わせた作り手(彫師)の棲み分け、柔軟な制作環境が今後の発展にもつながるのだろう。

 同店では、定期的にフラッシュイベントを行っており、梅雨やバレンタインなどの時期にそれらにちなんだモチーフをKENGOさんがデザインし展開している。タトゥー初心者にとっても一歩踏み出しやすいデザインや価格帯となっている。予約は2人のインスタグラムのDMから。

【BALANCE TATOO STUDIO】

住所:宮崎県宮崎市橘通東3丁目433

電話番号:0985-22-4148

営業時間:12時~21時半

URL:https://www.kowhey.com/

https://www.instagram.com/balance_kowhey/

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